<即答で諭す。>
すーぅっと息を吸う亮一。
急いで亮一の口を塞ぐ。
「むがっ。」
「ばかぁっ!思いつきで無謀な行動するなっ!」
思わず大声を上げる。
口を塞いでる手を引っぺがして亮一が言う。
「うひゃひゃひゃ!今ので聞こえたんじゃねぇかな?」
亮一は嬉しそうだ。
自分でも軽率な行動だったと思わず反省してしまう。
ピタ・・・ピタ・・・ピタ・・・
聞き覚えのある音。
ついさっき耳にしたばかりの恐怖の根源たる音。
「あ・・・。」
「あらら、俺しーらねっ。」
こんな時にまでケラケラと笑う。
木刀を握る手に力が入る。
「クソッ!どうすりゃいいんだ・・・。」
「だーいじょぶだって。大体の強さくらいはわかるからさ。」
こちらの殺気を察知したのかソレは四つんばいになって向かってきた。
「お前一人でも負けねぇ相手だって。」
「…解った。お前を信用する。」
「クククッ。いい子だ。先に俺が出る。お前と
なら息の合った攻撃が出来そうだ。」
そう言うと亮一は目を据わらせてソレに
向き直った。
深呼吸をする。
さっきは咄嗟の事で冷静さを欠いたが今度は
違う。
相手がどんなものであるか位は解る分、
精神的な落ち着きは大分取れる。
木刀を握る手に汗が滲む。
ギュッと木刀を絞りなおす。
あと、5メートル
4メートル
3メートル
出るな。
そう思うと同時に亮一が打って出た。
第一撃…かわされる。
ソレは壁に引っ付くとそのまま天井に登り亮一の真上から落ちてきて。
落ちてくるソレをバックステップでかわし、さらに上から木刀を振り下ろす亮一。
今だ!
ソレは亮一の木刀を大きくバックステップでかわしたがそれが間違いだった。
俺は大きく木刀を振りかぶり袈裟から切り下ろした。
ドゴキッ
インパクトの瞬間、聞くだけでも気持ち悪い音がする。
袈裟斬りは見事に上から首に直撃したのだった。
ドサッ
スローモーションの動画の様にゆっくりとソレが崩れていく。
ソレは首を変な方向に曲げ、ぴくっぴくっと痙攣していた。
「はぁっはぁっはっはっ」
「おうおう、やっぱり椿ちゃんだなぁ。完璧だわ。」
ケラケラ
「や…ったのか?」
「おうよ、完璧なコンビネーションだぜ。俺達が組んだら全国で適うやつぁいないだろう。」
ケラケラ
「はぁーっ」
脱力して座り込む。
「おろろ。何をそんなに疲れてんの?立ち眩み?」
「おまえは…なんでそんなに…元気なんだ?」
「あぁ、気疲れか。まぁ、こんなもんとは言え人型だからなぁ。喧嘩慣れしないと駄目よ、椿君。」
そう言って亮一はポケットから愛用のジッポとタバコを取り出した。
キンッ ボワッ
タバコを咥えて火をつける。
咥えタバコで俺の横に座る。
「おいしいか?」
「子供にはわからん味だな。」
「むっ!じゃあ一本くれ。」
「二十歳未満の喫煙は法律で禁止されております。」
「人のこと言えるのか?」
「ケラケラ、言えんわな。タバコ一本貸しな。」
「返さないけどな。」
「厳しいなぁ…。12.5円もするんだぜ?一本。」
タバコ咥えると亮一は火を持ってきてくれた。「どうやって吸うの?」
「まず、口の中に溜めてだな。それを吸って五臓六腑に染み渡らせるんだ。」
言われたとおりにやってみる。
「ゲホッ…ゲホッ、ゲホ。」
「ほらいわんこっちゃない。これに懲りたらこの一本で禁煙するこったな。」
「こんなもん…よく…吸えるな。」
「子供にはわからんのよ。ケラケラ。」
もう一度吸ってみる。
今度は咽はしなかったが言い様の無い感覚が脳まで到達してしまったかのように世界が回り始めた。
「あらら。無理すんな。体に毒だ。」
「不味いな…。でも、なんとなくだけどわかった気がする。」
「おうおう、知った風な事言っちゃってぇ。愛煙家の何を解ったのかな?」
「口が寂しいってやつ」
「ひゃひゃひゃ、そいつは結構!」
一段落してタバコを吸い終わった。
「なぁ、亮一。」
「んあ?」
「その、気のせいかも知れないんだけど。」
「おうよ。」
「この階にまだなんか居る気がしないか?」
「さぁ。全然わからんなぁ。」
「そうか、俺の気のせいかな?」
「さぁな。お前の勘は当たるからなんとも言え
んけどな。」
「さて…。」
「もう一回ちゃんと探してみよう。」
「もう少し待ってみよう。」
「先を急ごう。」