「二手に分かれるか。」


「うい。それじゃ俺は、3−Aから回るわ。」
「解った。じゃあ、終わったら東階段で待ってる。」
「それじゃ、後でな。」
そう言うと亮一は3−Aに向かって走り出した。」
3階は中等部の3年のクラス、A〜Gまでがある。
とりあえず間近の3−Gから戸を開けていく。

ガラララララッ
誰も居ない。

同じように3−F、3−Eと見てみたが人がいる気配は無い。
教室の中はどのクラスももぬけのからだった。
「やっぱり・・・誰も居ないのか?」
ガラララララッ
教室から出る。
待ち合わせ場所である、東階段の踊り場に向かう。

・・・遅い。
たかだか教室を見て回るくらい何分も掛からないと思うのだが。
そう思って廊下を見渡す。

すると、亮一が何やら引きずって歩いてきた。
「わりぃわりぃ、ケラケラ。」
「わりぃわりぃって・・・ってお前、血が出てるぞっ!?」
亮一は頬を微かに切っていた。
そこからは線を伝う様に血が滲み出ている。
「あぁ、かすり傷だべ?ほっとけほっとけ。ちっと苦戦しただけだからよ。」
そう言うと亮一は引きずっていたモノをこっちに放り投げた。
「こ・・・これって!?」
「さっき、いきなり襲われてよぉ。びっくりしたっつーの、ケラケラ。」

「まだ、こんなのが幾つも居るって事かよ。」
「そーゆーことになりますわ、椿の旦那っ。」
「はぁーっ。」
脱力する。
ただでさえさっき戦った時の後遺症か手がブルブル震えてると言うのにこんなのがまだ何匹も居るかと思うと・・・。
「あらあら、どうしたの?立ち眩み?」
亮一は何故こんなに元気なのだろう・・・?
疲れとか、恐怖とかそう言った物がこいつには無いのだろうか?
「お前は・・・なんでそんなに・・・元気で居られるんだ?」

「あぁ、気疲れか。まぁ、こんなもんとは言え人型だからなぁ。喧嘩慣れしないと駄目よ、椿君。」
そう言って亮一はポケットから愛用のジッポとタバコを取り出した。

キンッ ボワッ
タバコを咥えて火をつける。
咥えタバコで俺の横に座る。
「おいしいか?」
「子供にはわからん味だな。」
「むっ!じゃあ一本くれ。」
「二十歳未満の喫煙は法律で禁止されております。」

「人のこと言えるのか?」
「ケラケラ、言えんわな。タバコ一本貸しな。」
「返さないけどな。」
「厳しいなぁ…。12.5円もするんだぜ?一本。」
タバコ咥えると亮一は火を持ってきてくれた。「どうやって吸うの?」
「まず、口の中に溜めてだな。それを吸って五臓六腑に染み渡らせるんだ。」
言われたとおりにやってみる。
「ゲホッ…ゲホッ、ゲホ。」
「ほらいわんこっちゃない。これに懲りたらこの一本で禁煙するこったな。」

「こんなもん…よく…吸えるな。」
「子供にはわからんのよ。ケラケラ。」
もう一度吸ってみる。
今度は咽はしなかったが言い様の無い感覚が脳まで到達してしまったかのように世界が回り始めた。
「あらら。無理すんな。体に毒だ。」
「不味いな…。でも、なんとなくだけどわかった気がする。」
「おうおう、知った風な事言っちゃってぇ。愛煙家の何を解ったのかな?」
「口が寂しいってやつ」
「ひゃひゃひゃ、そいつは結構!」
一段落してタバコを吸い終わった。

「なぁ、亮一。」
「んあ?」
「その、気のせいかも知れないんだけど。」
「おうよ。」
「この階にまだなんか居る気がしないか?」
「さぁ。全然わからんなぁ。」
「そうか、俺の気のせいかな?」
「さぁな。お前の勘は当たるからなんとも言えんけどな。」

「さて…。」

「もう一回ちゃんと探してみよう。」
「もう少し待ってみよう。」
「先を急ごう。」

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