デイズ
ep

目覚ましが鳴る。
瞼を通り越す様な日差し。
起き抜けから脱力させる様な湿気。
「あっち・・・。」
朝一番の台詞。
ここの所いつも同じ台詞。
寝惚けながら目覚ましを手に取る。


7時半・・・

「やば・・・朝練間に合わねぇや・・・。」
急ぐ風もなく着替え始める。
アイロンの掛かってないワイシャツ、ックの消えかかったズボン。
気を緩めるとそのまま寝てしまいそうな意識の中、着替えを済ませ鞄を手にとって家を出る。
「いってきまーす。」
誰も居ないのに出てしまう台詞。

外に出るとギラギラと言う形容がピッタリな程、太陽は照り付けていた。

また一日が始まる。

朝練をサボった以外何も変わらない。

一日が

始まる・・・

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のんびりと坂を下っていく。
朝練には間に合わないが学校には十分過ぎる程余裕のある時間だ。
「くっあ〜ぁ。」
大口を開けて欠伸をする。
いつもの風景、いつもの通学路。
道行く人でさえ同じように感じる。

俺の通う都立N学園は既に見えている。
後は直線距離で数百メートルと言ったところか。
うちの学校はかなり大きいだけに離れていても
その姿は目に入ってくる。
初等部、中等部、高等部と分かれているだけで、
校舎こそ違うが同じ場所にある。
校門から向かって正面が中等部、高等部の校舎、
左が初等部の校舎だ。
俺はそこの高等部2年だ。ちなみに部活は剣道
部。
こうやって見渡すとうちの生徒はあまり居ない
ようだ。

もちろん、朝練をする奴らはもっと早いだろうし、普通に登校する奴らはもっと遅いのだろうけど・・・。
暑さにやられながらとぼとぼ歩いていると不意に後ろから突き飛ばされた。

ドンッ

「・・・くっ。」
不意打ちを喰らいはしたがどうにか転ばずに済んだ。
衝撃のあった方を振り向く。
下から覗くと太陽が邪魔で黒い影のようにしか見えない。
「遅いじゃない。剣志。」
「その声は・・・夏夜か。」
視界に影を作って見直すとそこには髪の毛の短い女の子が立っていた。

「朝から突き飛ばすなよ・・・。」
「弛んでるゾっ!気配に気づかないとは弛んでる証拠だっ!」
えっへんと言わんばかりに胸を張る。
夏夜・・・それは違う。・・・違うと思う。
体制を立て直して歩き出す。
夏夜もそれに着いて来る。

「あ・・・怒ったぁ?」
「怒ってない。」
「怒ってるぅ〜(T-T)。」
そう言うと夏夜はしゅんと俯いてしまった。
彼女、悠木 夏夜(ゆうき かや)は俺の同級生で俗に言う幼馴染だ。
小さい頃から活発でどつかれるのは挨拶代わりである。
少しは有名なうちの弓道部で次期主将の座を確保していると言う才実の持ち主だ。
チラッと横目で見てみるとやっぱりまだ
俯いている。

適わねぇな・・・。
居た堪れなくなって話しかける。
「おまえは朝練じゃないのか?」
「朝練だよ?」
何を当たり前の事を聞く?と言う顔だ。
そう、この子は凄く切り替えが早い。
「・・・急がなくていいのか?」
「あ゛っ・・・。」
そして、おっちょこちょい・・・。
「忘れてた、てへっ。」
ついでに忘れん坊・・・。
「てへっじゃない。ほら、急げ。俺はもう間に合わないからゆっくりしてんだから。」

「うんっ!じゃあ、学校でね。剣志。」タッタッタッと駆けていく夏夜。
手には弓が入っていると思われる布が握られている。
「いつも忙しいな・・・。」
その後ろ姿を見守りながら歩き出す。
「あ・・・ぱんつ見えそう。」
そう思った瞬間自分の拳が頭を直撃していた。
「何考えてんだ、俺。寝惚けてんのか。」
フルフルと頭を振ってまた歩き出す。
もう夏夜の後姿は無い。

校門まで来ると用務員のおじいさんが居た。
「おはようございまーす。」
おじいさんもこちらに気づいたのか帽子を取って挨拶をした。
「あぁ、おはよう。今日は早いんだねぇ」
この人は富永 伊知朗。通称富さん。
歳の程は知らないが初老と言う言葉は通り過ぎてしまっていると思われる。
気のいいおじいさんで俺はよく放課後に話をしたりする。
「そうですか?実は朝練に遅刻なんですよ。」
あはは、と軽く笑う。

「おぉそうだったのかえ。まぁたまには休むことも必要じゃて。」
「そういってもらえると気が楽ですね。」
「うんうん。さ、もう行った方がええ。朝とは言え帽子も無しでこの日差しじゃ日射病になってまうからの」
「そうっすねぇ。じゃあ、これで。」
そう言ってまた歩き出す。
熱いと言えば正面玄関の前にはまたいつもの様に陽炎が出来ていた。
「これ以上脱力させないで欲しいよな・・・。」
一人呟くと正面玄関に向かって足を動かす。
陽炎に向かって歩き出すと言えばベストマッチだろうか・・・?

ブオォン

「・・・・?」
聞いたことも無い様な音が聞こえる。
しかし辺りを見回してもそれらしい音を出すような物は見つからない。
「空耳か・・・。」
少し肩をすくめて下駄箱で靴を履き替える。
いつもよりひんやりした校内。
この時間で校内に誰か居るとすれば教師くらいだろうか。
そう思いながら4階にある高等部2−C教室に向かう。


ガラララララララッ


教室の戸を開け、中に入り自分の席に着く。
案の定誰も居ない教室。
「早く来過ぎたかな…。くあっ…。」
少し多めに寝たせいかまだ目が完全に覚めてないようだ。
「ちと。寝るかな・・・。」
誰か来れば起こしてくれるだろう。



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