「そうだな。じゃあ瑠璃ちゃん来てくれる?」
「えぇ〜。甘糟せんぱ〜い。シクシク。」
「しょうがない。なんかの訳があって椿は瑠璃ちゃんを選んでんだ。また後で会おうぜ。今度会ったらチューしてやるから。」
「はい〜。約束ですよぉ〜?瑠璃、チューの為に頑張っちゃいますぅ〜。」

チューが無いと付いてきてくれないのか?亮一が居ると瑠璃ちゃんは変わるんだな…。

「じゃあ亮一らは西階段からここ、そして正面玄関を頼む。俺達は東階段から回って中央裏階段を見てくる。
あそこは色んな部活の部室が並んでるからな。一番可能性が強いだろう。」
「そうだな、じゃあ瑠璃ちゃん任したぜ。傷つけんなよ!」
「姉上、どうか御無事で…。」
そう言うと二人は西階段に向かって駆けていった。
「じゃあ、俺達も行こうか。」
「はいですぅ〜。悠木せんぱいみつけましょうねぇ〜。」
俺達も東階段に向かって走り出した。

走る、走る、走る。
けれども一向に東階段は見えてこない。
「くそ…なんなんだよ、これ?」
実際の校舎であれば走らなくてもいい程の距離に東階段はあるはずだった。
しかし、今は違う。
行けども行けども階段は見えてこない。
「だあああああもう限界だ!はぁ、はぁ、大分走ったな。」
チラッと横の扉を見る。
教室のプレートには[中等部 職員室]と有った。

「まだここかよ…。」
「ここからは〜、少し歩きませんかぁ〜?」
「そうだね。走り疲れちゃったらいざと言う時に戦えないからね。」
息を整えてから歩き出す。

テクテクテクテク

自分達の足音、息遣い以外は何も聞こえない。
そして、行けども行けども見えてこない西階段が感覚を狂わせる。
もう何分、何十分経っただろうか?

西階段は一向に見えて来ない。

「椿せんぱ〜い。一ついいですかぁ〜?」
「何?何か見つかった?」
「椿せんぱいって悠木せんぱいの事好きなんですかぁ〜?」
「ブーーーーーーーーッ!」
「あら〜?図星でしたかぁ〜?」
クスクス小さく笑う。
「な、なななんでそんな事を聞くの?」
「なんとな〜く、ですぅ〜。」

俺が馬鹿だった…。
この子には隠し事も「なんとな〜く」で見破られてしまうのか…。

「ウフフッ。内緒にしておきますねぇ〜♪」
し〜っと人差し指を口にあてる。
「そうしてくれると助かるよ…。」
まいったな…。
「椿せんぱ〜い?」
「…今度は何?」
「なんとな〜くなんですけどぉ、さっきも中等部の職員室とおりませんでしたっけぇ〜?」
「へ!?」
右手に見える教室のプレートを見る。
プレートには…
[中等部 職員室]書いてある。

気づかなかった…。
まさか同じ道をぐるぐる回されていたなんて…。
「亮一達は大丈夫かな?」
「珊瑚さんが付いてますからぁ〜。私だったから気づかなかっただけでぇ〜。珊瑚さんなら一周した時点で気づくと思いますぅ〜。」
「なるほど。でも気づいただけでも凄いよ。有難う瑠璃ちゃん。」
そう言って俺は瑠璃ちゃんの頭を撫でた。
「わ〜い。イイコイイコされちゃったぁ〜。悠木せんぱいに怒られちゃうぅ〜。」
にっこり笑って瑠璃ちゃんはそう言った。

俺は赤面してそっぽを向いた。
「あはっ♪照れちゃったぁ。意外とウブなんですねぇ〜。椿せんぱいってぇ〜。」
そう言って瑠璃ちゃんはウインクをした。
「何、馬鹿な事言って…。」
そう言い掛けた時。

「くっ…!?」
激痛が脳を通り越す。
その感覚は次第に速度を増して襲ってきた。
ドクッドクッドクッドクドクドク。
頭を抱える。
「ぐっっっっっあ・・あああ・・あぁ…・
あっ!」
まるで鼓動をするのが当たり前のように、脳が伸縮する。
「せ…んぱい?どした…ですか?せ〜せ〜せ〜ん〜ん〜ん〜ぱ〜ぱ〜ぱ〜い〜い〜い〜。


あはは、瑠璃ちゃん。なんでそんなに心配そうな顔でリピートしてるの?壊れたレコードみたいだ。


ははは。



目が覚めた。
学校の教室。
高等部2-Cの教室。
俺の席。
俺の席に俺が居る。

臨死体験?

自分を客観的に見る自分。

多重人格?


あ、襲われる。
ドアが開いたら襲われるぞ!
逃げろ、俺!
あれ?亮一。
そう言えば言ってたっけ?
「全部聞こえてた。」って。
本当だったのか。
後でとっちめておこう。
何だろう?何か俺を呼んでる?
何処だろう。
体育館だ。
朝練。
やってないや。
今日は休みだったのかな?

サボったと思って損しちゃったな。



人が居る。
弓道部だ。

あ、夏夜だ。
どれどれ。
わお!ど真ん中。さすが次期主将!
あれ、もう辞めちゃうのかな?

何処行くんだろう?
あれ?なんだろう?

逃げてる?

何から?

女生徒?

弓道部室に入っていった。
バリケード作ってる?
何のために。
アレに襲われない為に?
アレって何だろう?

珊瑚が言ってた。
カニなんとか
思い出せないや。
もう入って来れないみたいだ。
安心、安心。



今度は何?
笑ってる?

誰が?

何を?

春日先生?

どうして春日先生が?

何を?

何を笑ってるの?

何をわらって?

何をわらっ?

何をわ?

何を?

何?

な?

暖かい。
柔らかい感触。
頭の下にある。
何か落ち着くなぁ。
「せ…い〜!つ…き…せ…ぱい〜!つば…せんぱい〜!」
瑠…璃…ちゃん?
目が開かない。
「椿せんぱい〜!嫌だ〜、嫌だよ〜!せんぱい〜目を…目を、うくっ。目をぉ、開け…ひっく・・ってよぉ〜。」
瑠璃ちゃん…なんで泣いてるの?
まだ声が出ない。

「また…瑠璃っ…にぃ〜。けんどぉ…ひっく…教えてっよぉ〜!頑張り屋さんのっ・・うっ・せ・・ぱいにぃ〜。
なんとな〜くでっ…勝っちゃったり…うぅ・・しな…からぁ〜!」

そう言えばそんな事があったっけ…。

「ジュース賭けた…勝負っ…あた…しっ…勝ったのにッ・・うっく…まだっ・・奢ってもらってぇぇ・・無い…
ひっく・・んだからぁ〜!」

そんな事もあったなぁ…。

「甘糟せんぱっ・・いっと・・瑠璃とぉ〜…悠木せんぱいっ…と…つっ…ばきせ・・ぱいでぇ。だぶるでーと。
っく・・しようってぇ…約束したっ…じゃないですかぁ〜!起きてよぉ〜!瑠璃っ!…
るり…瑠璃ぃ…ひっく…せんぱいがっ・・うぅ…起きないと…泣いちゃうんだからぁ〜!」

そう言えばそんな約束…して…ない…よ?


「くっ!」
「っっっ!」
徐々に目が開く。
そこには、涙で顔をくしゃくしゃにした瑠璃ちゃんが真上から覗き込んでいた。
「あ…ぁぁっ!」
「瑠璃ちゃん…泣きながら「泣いちゃうんだから」は、変だよ。」
「…・」
「後・・ね。ダブルデートなんて…約束してない…。」
「てへっ。嘘っ…ついちゃい…ました〜。」
そう言うと瑠璃ちゃんはチロッと下を出した。

「あ〜ぁ。こんなに泣いて…。可愛い顔が台無しだよ。亮一に会ったら何て言い訳すればいいかな?」
彼女の涙を拭いながら尋ねる。
「本当の事を言えばいいんじゃないですかぁ〜?なんとな〜くですけど、それで許してもらえる気がしますぅ〜。」
「なんとな〜くか。頼りになりそうだな。」
一頻り彼女の涙を拭った後。
「おはよう、瑠璃ちゃん。ごめんね遅れちゃって。」
「おはようございます〜。いいんですよぉ〜、椿せんぱ〜い。」
いつもの朝練の挨拶だった。

瑠璃ちゃんの膝枕から頭を起こすと2、3回フルフルと頭を振った。
少し頭の中を整理してから話し出す。
「今、夢を見たんだ。」
「ゆめ…ですかぁ〜?」
「どうだろう、夢と言うより臨死体験なのかな?」
「はぁ〜。それでぇ、どんな夢なんですかぁ〜?」
「自分を客観的に見ている感じ。そして二つばかり解った事がある。」
「なんでしょう〜?」
「一つはみんなが揃ってから話す。もう一つは夏夜の居場所だ。」

「悠木せんぱいですかぁ〜?」
「うん、弓道部室の中に一人で居る。まだ、無事だ。」
「御無事なんですねぇ〜、よかったぁ〜。」
彼女はにっこり微笑んだ。
「それで瑠璃ちゃんに聞きたいんだけど、この無限回廊。どうやれば抜けられそうかな?」
「ん〜っ。」
眉を寄せて考え込む。
「なんとな〜くですけど、この職員室から出られそうな気がしますよぉ〜。」
「おし、じゃあ善は急げだ!行こう。」
彼女の手を掴んで歩き出す。
「はい〜。」

扉を開ける。
見渡しても中には誰も居ない。
「大丈夫そうだ。」
足を一歩踏み出して職員室の中に入る。
ブオォン
聞いた覚えのある音がする。
瑠璃ちゃんの手を握って振り返ると彼女の手は見えるものの体は見えない。
「なっ!?」
少しすると瑠璃ちゃんも中に入ってきた。
「はぁ〜。次元が違うみたいですねぇ。」
「へ?」

「いいえ〜。独り言ですよぉ〜。」
「じゃあ取りあえず反対側の扉から出よう。」
「はい〜。」
扉を開けて首だけだし辺りを確認する。
誰も居ない。
アレもコレもソレも…。
「じゃあ一気に行くよ。」
「らじゃあ〜。」
ダッシュで職員室を出て裏階段まで着くとそのまま弓道部室の前に来た。
「成功だね。」
「はい〜。」
「さてどうするか。」
見たところ扉しか見えない。

叩くか。

ドンドンッ!
「っ!」
かすかだが声が聞こえる。
ドンドンドンッ!
「イヤーッ!来ないでっ、来ないでよっ!」
間違いない、夏夜だ!
「夏夜ーっ!俺だーっ!開けろーっ!」
「剣志っ。剣志なのっ!?」
「あぁ、俺だーっ!瑠璃ちゃんも傍に居るーっ!開けてくれーっ!」
「悠木せんぱ〜いっ!葵です〜っ!開けてくださ〜い!」

「剣志っ!ちょ、ちょっと待って!うんしょ…ちょっとまってねぇっ!」
ドアの向こうからガシャガシャと重たい物を動かす音がする。
良かった…無事だった。

危うく涙が零れそうになった。

涙はどうにか堪えられた。

でも、心の昂りはそうもいかなかった。


数分後
ゆっくり扉が開く。
そこには、あの夢で見た通り弓道着姿のままの悠木 夏夜がいた。
「あ…あぁっ!ケンジっっ!」
バフッと夏夜が飛び込んでくる。
「遅いっ!遅いよぉっ!ばかっ…。死んじゃうかとっ…死んじゃうかとおもったんだからねっ!」
強気な事を言いながらも俺にしがみつく夏夜の体は微かに震えていた。
「ごめんな…。でも…間に合っただろ?」
こちらも負けじと強く抱きしめる。

夏夜の体が振るえないように、夏夜の体が震えられなくなるくらい。


夏夜の体が…震えなくなるまで…。



どれ程そうしてただろう?
時間の経過を忘れただお互いの存在を確信し、そして忘れないようにお互いの体温を確かめていた。

ニコニコ ニコニコ

ん?

ニコニコ ニコニコ

なんで擬声語が聞こえるんだ?


ニコニコ ニコニコ

あ…もう一人いたっけ。


「悠木せんぱいはぁ〜、椿せんぱいのこと好きなんですねぇ〜。ちょっと妬けちゃいますよぉ〜。ニコニコ♪」
その声に二人とも反応しガバッと離れる…。
「さ、さぁみみみんなのところにいこうか。夏夜や。」
「そ、そそうね。みみんななをまたせちゃわ、わるいもののね。」

「いいんですよぉ〜。瑠璃は気にしてませんからぁ〜♪」
「い、いや先を急ごう…。」
そう言って俺は二人の手を引き歩き出した。
正面玄関に着くと亮一も珊瑚も、息も絶え絶えと言った風にヘタって座り込んでいた。
亮一に関しては上半身裸である。
「はぁっはぁっはぁっそっちは…んまくいったみたいだな…はぁっはぁっ。」
それだけいうと亮一は大の字になりポケットからタバコを取り出し火を点けた。

「な…、何でそんなに疲れてんだ?」
「何でも、ウェンズデーも無ぇよ。馬鹿珊瑚が、無限回廊だって知っていながら謎が解明するまでだかなんだかしんねえけど、
教えねえもんだから。こちとらトラック100週ぐらいしたっつーの!」
一方の珊瑚は
「はぁっはぁっ。走っているうちに謎が解けると思ったのだ!しかし、全然手口が掴めず兄上殿が申した通り100週程してから力尽き、
たまたま職員室に入ったら無限回廊が終わったのだ…はぁっはぁっ。」
「ったく。二週目で気づいたんなら言えっつーに…。無駄に体力使っちまったよぉ!」

その姿をみて俺と瑠璃ちゃんは顔を見合わせ小さく笑った。
「大変だったなあ、亮一。」
「運動不足が祟ったな…。このくそあちい中100週もまわりゃ誰でもへばると思うけどなぁ。」
「甘糟せんぱ〜いお疲れ様でしたぁ〜。」
そう言うと瑠璃ちゃんはしゃがんで亮一の頭をももの上に置くと覆い被さる様にして小さくキスをした。
「約束のチューです〜。」
当事者の二人以外が赤面する。
夏夜は
「君は誰?」と、珊瑚に問いかけた。

「わ、わたしは葵 瑠璃の弟で葵 珊瑚と申…言います。」
「そう。偉いのね。ちゃんと自己紹介出来るのね。私は夏夜。悠木 夏夜。夏の夜と書いて夏夜よ。
有難う。貴方も私を探してくれたのね。」
そう言うと夏夜はニッコリ微笑んだ。

可愛い…。


「珊瑚君はどうする?疲れたでしょ?良かったら膝枕したげよっか?弓道着で申し訳ないけど。」

マージっすか!?
ちらっと、珊瑚に目をやると顔を真っ赤にして戸惑ってはいたが満更嫌でもなさそうだ。
さんざまよったあげく出た言葉が…。
「お、お願いします。」

ガ〜〜〜〜〜ソ!!

明らかに俺だけ置いてけぼり、否むしろ除け者…。

しばらくその様子を傍観していた。

珊瑚に八つ当たりは流石に大人気ない。でも亮一はどうだ?
言うに事欠いて、どっから取り出したのか瑠璃ちゃんは耳掃除を始めている。


………………ドスッ
「ぐはあああっ!」
八つ当たりに亮一のみぞにトーキックを入れてみた。
少し気が晴れた。

「さて、みんなちょっと聞いてくれ。」
流石に状況を察したのか亮一も、珊瑚も体を起こす。
「さっき一階を探索しているときに俺は急な頭痛に襲われて倒れた。瑠璃ちゃんの目の前でだ。

「死んじゃうのかと思いましたよぉ〜。」
「不可抗力だ、許してくれ。」
「はい〜。解ってますよぉ〜。」
「で、話を戻すけど倒れてる間俺は夢を見た。と言うよりデジャヴと言った方が近いか。
とにかく俺が今いる俺を客観的に見ている感じの夢をみたんだ。」
「ふむ、また解せぬ事申すのだなおぬしは。」

「まぁ、聞いてくれ。そこで二つの事象を見た。一つは夏夜が弓道部室に閉じ篭るまで。そしてもう一つは。」
みんなの視線が集まる。
「春日 美月先生。リーダーの春日先生だ。」
「おいおい、ちょっと待てよ。」
亮一が口を挟む。
「なんでだよ?春日っちが出来たからってそれが何の関係があるんだ?関係ねぇだろ?」
何の確証も無い事だけに、頑なに言い返す事も出来ない。
むー、と考えていると思わぬ所から助け舟は出てきた。

「いや、満更関係ないとも言えぬぞ。少なからず夏夜殿をお助けする手段を見出した夢。夏夜殿が閉じ篭るまでの一部始終を見た。
と言う事はある意味マルチサイト的な物あるのだろう。この人がこうしてる時あの人はこうしてたと言う様な事柄がな。」
「うん、珊瑚の言うとおり。マルチ何とかに関しては解らないがその後の説明はピッタリ当てはまる。」
「ねぇ、ちょっといいかなぁ?」
夏夜が口を挟む。
「あのね。私が閉じ篭ってた時ね。わたしも…聞こえたの。」
「何が…?聞こえたんだ?」

「春日先生の…笑い声。」
そう言うと夏夜は肩を竦めた。
俺が瑠璃ちゃんに目で合図を送ると瑠璃ちゃんはそれを察して、夏夜の肩を抱いた。
「俺の夢の中でも春日先生は笑ってた…。恐らく、今回の真犯人は春日先生だと俺は思う。」
俺と夏夜以外は納得が行かないと言う顔をしている。
「お主の言う夢とは存在するとは思えぬが意識回廊のリンクとでも言おうか、何か違う者の意識を通して見たのかも知れぬな。」
珊瑚は相変わらず難しい事を言う。

「ん〜でもよぉ。椿。俺はどうも信じられねぇんだよなぁ。春日っちが真犯人だってなると、
春日っちがあの何たらワームを生徒に埋め込んでるって事だよなぁ?」
「カーニヴォロス パラサイトワームだ。」
「なんでもいい。とにかく春日っちだぜ?あんなにお姉さん気質で頑張り屋の春日っちがそんなことするとは思えねんだよなぁ。」
「俺も、信じたくはない。もしかしたら、春日先生が第一の被害者なのかも知れない。とにかく今ある手がかりは春日先生しかないんだ。」
「んー。そう言われると…返答に困るけどよぉ。しゃあねぇ、探すしかねえな。」

そう言うと亮一はすくっと立ち上がった。
「とりあえず武器を確保しよう。自分の身は自分で守れるように…。」
まず一番遠出の弓道部室から夏夜の弓矢を回収、その後廊下の掃除道具入れからモップを取り出し柄を折って瑠璃ちゃんへ。
「お前はどうするんだ?珊瑚」
「心配御無用。理科室からアルコールランプを5つ程拝借してきた。火炎瓶くらいにはなろう。いざとなれば愛用のメスも鉄扇もある。」
「…・お前が一番強いかもな。」
みんなが武器を手にして再び正面玄関。
「どうやって探すよぉ?校内はもう見るところないぜ?」

「グランドはまだ見てないだろ?グランドに出てみよう。」
窓の部分をコンコンと木刀で突付く。
ガラスである事が確認できたなら一息。
ガシャーーーーーーーンっ!
一丁上がりっと。
そのまま正面玄関を蹴破ってグランドへ出る。
グランドには…
空いっぱいに広がる近づき過ぎた月をバックに一人の女性が佇んでいた。
「ンフフフフッ、フフッ、アハハハハハッ!」
不気味に響き渡る声。
この声はついさっき夢の中で聞いた声。

「春日…先生なのか?」
「椿君?まだ学校に残ってたの?駄目じゃない、ちゃんと私の下僕達に食べられてくれなきゃあ。」
「なっ!?やっぱり…お前が犯人なのか?」
みんな思い思いに武器を構える。
「ンフフフフッ!」
「答えろーっ!」
「そうよ、私がぜーんぶやったの。そこの坊やが思ってる通り寄生虫は私が作り出した、私独自の物よ。
この国は愚かあと2万年経っても地球上には生まれないでしょうね。」
…・何を言っているのかさっぱり解らない。
どれを聞いても支離滅裂だ。

ただどうしようもない生き物が俺達を殺そうとあの手この手を使っているようにしか思えない。
「お前は…誰だ?否、お前は何だ?」
「嫌ぁねぇ、椿君忘れちゃったの?私は美月よ。春日 美月。」
「違うっ!お前は…お前は春日先生なんかじゃないっ!答えろ!お前は何なんだ!何故俺達を狙う!」
「しょうがないわね。何も知らずに死んでいくのは可哀相だから少しだけ貴方達の低域の知能指数でも解るように教えてアゲル。
私は、そうねぇ貴方達の言うエイリアンと言うのがピッタリかもしれないわ。」

エイリアン!?
「地球外生物か…。」
「物分りがいい子は好きよ。目的は地球征服って感じかしら。」
「随分と子供の様な考えなのだな。エイリアンとやらも。」
「貴方達に解る様に言ってあげてるの、勘違いしない頂戴。そんな下らないことだけじゃないわ。
あの月を見て悔し涙を流してたのは何処の坊やだったかしら?」
「くっ…!」
春日 美月はクスッと妖艶な笑みを浮かべた。

「それとね、別に貴方達を狙ってるわけじゃないの。人間だけを狙ってるの。そこの所も勘違いで自惚れないで頂戴。
人間と言うカテゴリーの中の一部に過ぎないわ。だから本当はこんな事を話すの可笑しいのだけれど。もうすぐ人間という種族は絶滅してしまうから。
私の後ろの月、見えるわよね?あれは私達の船よ。」
「船…!?」
「あそこには私と同じ種族が一億人程乗っているわ。人間なんていう劣等種には1000人でも多いのだけれど、完全主義なのよね、私達。」
「…・」

「言葉も出ない?それとも理解できないのかしら?無理も無いけどもね。私が呼び寄せてるのよ。素敵でしょ?
あの大きな月貴方達に望みがあるとすれば、私を倒す事くらいかしら?もっともそれも無理な話ね。でも以外だったわぁ。
まさか私が作った次元に入られるとは思わなかったわ。貴方達人間じゃないのかも知れないわよ?」
「…お前を倒せば…俺達は助かるのか?」
その言葉に春日 美月の瞳の色が変わる。
それは、紅い血の様な色…。
「そうね。…少しお喋りが過ぎたわ。そろそろ死んで頂戴。」

その言葉と同時に光りだす、目、眼、瞳…。
ツィーッと空に浮かぶエイリアン呼ばれるモノ。
「囲まれてますねぇ〜。」
「おいおい、戦争かよ?こりゃあいくらなんでもまずいぜ、椿。」
五人が背中合わせになる。
「どうしよう!?剣志。」
「アルコールランプ5つで殺れて25人と言う所か。足りないな…。」
どうする…どうする!…どうする!?

思いつく様な方法は二通りしかない。
様子を見るか、元凶を叩くか…。
「椿、お前の言う通り俺達は動く。お前が指示を出せ。」
よし、それなら

元凶を潰せば終わる!
少し戦って様子を見るべきか…

SS寄り