亮一
「そうだな。じゃあ亮一来てくれるか?」
「ふむ。」
亮一は随分と気の無い返事をする。
「いや、別に。」
「そか、それじゃあ急ごう。」
「うし。ちゃっちゃと悠木を探しますか。」
「じゃあ珊瑚達は西階段からここ、そして正面玄関を頼む。俺達は東階段から回って中央裏階段を見てくる。
あそこは色んな部活の部室が並んでるからな。一番可能性が強いと思う。」
「ふむ、そうか。では、ここで落ち合うとしよう。」
「甘糟せんぱ〜い気をつけてぇ〜。」
走る、走る、走る。
けれども一向に東階段は見えてこない。
「くそ・・・なんなんだよ、これ?」
実際の校舎であれば走らなくてもいい程の距離に東階段はあるはずだった。
しかし、今は違う。
行けども行けども階段は見えてこない。
「だあああああもう限界だ!」
「はぁ、はぁ、大分走ったな。」
チラッと横の扉を見る。
教室のプレートには[中等部 職員室]と有った。
「くそっ!まだここなのか。」
「だああ、もう喋んな!酸素が勿体無い。」
タッタッタッタッ
二人分の足音と呼吸だけが誰も居ない校舎に響いている。
「はぁっはぁっはぁっ・・・う・・・あっ。」
急に視界が落ちる。
足が縺れたんじゃない。
不意に襲われた頭痛に耐え切れなかった。
「なーにやってんだ。先行ってるからすぐ追いつけよ!」
ドクッドクッドクッ
脈打つように脳が振動する。
次第に速度を増す脳の鼓動に体が悲鳴をあげる。
ドクドクドクドクドクドク
「うあ・・・・ああ・・・あっ!・・・。」
脳みそが一際大きく膨らんだ瞬間。
目が覚めた。
学校の教室。
高等部2-Cの教室。
俺の席。
俺の席に俺が居る。
臨死体験?
自分を客観的に見る自分。
多重人格?
あ、襲われる。
ドアが開いたら襲われるぞ!
逃げろ、俺!
あれ?亮一。
そう言えば言ってたっけ?
「全部聞こえてた。」って。
本当だったのか。
後でとっちめておこう。
何だろう?何か俺を呼んでる?
何処だろう。
体育館だ。
朝練。
やってないや。
今日は休みだったのかな?
サボったと思って損しちゃったな。
?
人が居る。
弓道部だ。
あ、夏夜だ。
どれどれ。
わお!ど真ん中。さすが次期主将!
あれ、もう辞めちゃうのかな?
何処行くんだろう?
あれ?なんだろう?
逃げてる?
何から?
女生徒?
弓道部室に入っていった。
バリケード作ってる?
何のために。
アレに襲われない為に?
アレって何だろう?
珊瑚が言ってた。
カニなんとか
思い出せないや。
もう入って来れないみたいだ。
安心、安心。
?
今度は何?
笑ってる?
誰が?
何を?
春日先生?
どうして春日先生が?
何を?
何を笑ってるの?
何をわらって?
何をわらっ?
何をわ?
何を?
何?
な?
こっちに・・・。
近づいてくる?
逃げなきゃ。
何となくそんな気がする。
でも、足が動かない。
春日 先生?
なんで・・・首を絞めるの?
絞めてる何て優しいものじゃない・・・。
骨を折ろうとしてるんだ。
喉仏が圧縮される。
後少しで骨が折れるんだな。
なんで・・・なんでかな?
夢?
そうか・・・これは夢なんだ。
きっと目覚めたら
またいつもみたいに夏夜と朝会って
亮一がいたら一緒に馬鹿やって
瑠璃ちゃんと稽古して
帰る一日が始まるんだ
きっとそうだ
はやく・・・醒めないかな
夢の中でも
首を絞められると苦しいんだよな
一層強く首を絞められる。
春日 先生に目をやると
先生は薄く笑って
「だめよ、椿君。勝手に人の深層意識に潜り込んじゃ。」
言って今まで見た事も無い形相になった
瞬間
コキッ
END