<テーブルにある適当なのを取る>
「いえっ!?大丈夫ですよ!」
小鳥が辺りを見回すとまだ手付かずのグラスが4本程テーブルの端に乗っていた。
「あそこに、まだ残ってるみたいですし」
そう言って小鳥はいそいそとグラスを取りに行くと元居た席に戻ってきた。
その様子を見てプロデューサーは微笑んだ。
「大丈夫そうですね。あ、お姉さんウーロンハイを一つ下さい」
プロデューサーが注文をすると程なくして店員がグラスを一つ持って戻ってきた。
「ありがとう」
プロデューサーは店員に礼を言うとグイッとグラスを傾けた。
釣られてちびちびと飲みながら小鳥はその様子を隣で見ていた。
(なんか恥ずかしいなぁ…)
そんな事を思っていると視線に気付いたプロデューサーが小鳥に声を掛ける。
「どうかしました?」
怪訝そうに聞くプロデューサーに対して小鳥はフルフルと首を振った。
「いえ、なんでもないです!」
視線に気づかれていた事に内心戸惑いながらも小鳥は答えた。
「そうですか?」
プロデューサーの顔がぬっと近づいてきた。
「えぇっ!?っと、そのぉ…」
切れ長の眼が小鳥を見据えている。
プロデューサーの眼鏡に反射して写る自分の顔が徐々に大きくなる。
「ちょっと顔が赤いみたいですけど熱があるとか…」
小鳥の鼓動が急速に高まっていく。
「いえ、ほら!ここちょっと暖房効きすぎてませんかっ?」
小鳥が苦し紛れの言い訳をするとプロデューサーは考える様に視線を上に逸らした。
「言われてみれば暑過ぎる気もしますね」
小さく鼻で笑うとプロデューサーは顔を引っ込めた。
プロデューサーが少し離れるのを確認して小鳥は気持ちを落ち着けようと飲み物に口を付けた。
(はぁ、余計に暑くなっちゃった…まだドキドキしてる…)
トクン トクン
と胸の鼓動の高鳴りが続いている。
視界も霞がかった様に薄ぼんやりとしていて焦点が定まらなくなっていた。
(なんかボーっとするしフワフワするなぁ…)
30分後
プロデューサーは相変わらず静かにお酒を口に運びながら周りの様子を見ていた。
殆どの参加者が正常ではない事が一目で分かる有様だった。
開始して約1時間半。
既に誰もが酔っぱらいそのものだった。
昼の世間体に埋もれた少し気取った様子は無く、ありのままの自分が露になってしまっている。
(これは…。みんな大丈夫なのか…?)
久々の飲み会の所為か他の参加者達は異常なまでの盛り上がりを見せていた。
静かな時間を過ごしている自分の周りだけ違う空間の様な気さえしてくる。
(酔い潰れてしまわない事を祈るか…)
こう言う時に”ざる”である自分を恨めしく思う事がある。
盛り上がる先を見つめながら飲み物を飲んでいると腕に軽い衝撃が走った。
「っと」
零しそうになった飲み物を持ち直し衝撃を感じた腕を見ると小鳥の頭がプロデューサーに寄りかかっていた。
「…まさか」
プロデューサーが恐る恐る小鳥の顔を覗くと
「…スゥ…スゥ」
と穏やかな寝息をたてていた。
「音無さん…お酒は飲んでなかったんじゃ…」
小鳥が飲んでいたグラスを見てみると薄茶色い飲み物が半分程残っていた。
プロデューサーが手に取り自分の物と見比べてみると殆ど同じ色をしている。
「ウーロンハイでしたか…」
プロデューサーががっくりと肩を落とした。
諦めて小鳥に声を掛ける。
「音無さん、音無さん?」
軽く肩を揺すりながら小鳥に声を掛けると小鳥は眠そうに「ん〜」っと唸った。
「音無さん、とりあえず帰りますよ?途中まで送りますから」
小鳥が眠たそうにコクリと頷いたのを確認して自分と小鳥の上着を取りプロデューサーは飲み会の場を後にした。