2007年 1月 ○○日
今日、ボクに転機がやってきた。
きっと今日からボクにとって良い事が沢山起こるのだと思う。
だから柄にも無く日記を付けていこうと思う。
正直、あまりこう言うのは得意じゃないからいつまで続けられるか解らないけど…
忙しくなって間が開いてしまっても印象深かった事だけでも必ず書いて行こうと思う。
そして今日はボクにとって絶対そんな日なのである。
ダンスレッスン場からはラジカセから流れる音楽とそれに合わせてスポーツシューズがキュッキュッと音を立てていた。
「はぁ、はぁっ…はー疲れたー」
ラジカセを止めて首にかけておいたタオルで汗を拭うと真はあらかじめ用意しておいたスポーツドリンクに口をつけた。
「ゴクゴクゴクッ、はぁっ。やっぱり汗をかくのって気持ちがいいなぁ」
近くにおいてあったベンチに腰を掛ける。
「まぁでも、流石にそろそろデビューしたいよなぁ。みんな頑張ってるしテレビとかで良く見かけるもんなぁ。う〜ん」
そう独り言を呟きながら部屋の壁一面に張られた鏡に歩み寄る。
クルッとターンをして軽くポーズを決めたり、ウインクをしてみたり、ちょっとだけぶりっ子なポーズをしたりして…
「う…やっぱり、ボクのキャラじゃ難しいのかな…」
Tシャツの襟を伸ばして自分の胸元を確認する。
「胸もあるほうじゃないし…ブツブツ」
一人であれこれ悩んでいると不意にレッスン場のドアが開けられた。
「おわぁっ!!」
「きゃぁっ!」
不意に大声を上げたせいか、入って来た人物も軽く悲鳴を上げて尻餅をついた。
「びっくりしたぁ、もう…」
レッスン場に入って来たのは事務の音無小鳥だった。
「ごめんなさい、小鳥さん」
「ううん、平気よ。ノックせずに開けたの私だしこちらこそごめんね」
打った尻を撫でながら小鳥は小さく舌を見せた。
「いやいやそんな、でも小鳥さんなんでここに?」
小鳥に手を貸して立たせると彼女は小首を傾げた。
「えっと…なんで私ここにきたのかしら…?」
小鳥は腕を組んで真剣に考えている。
「ボクに何か用事があったとか?」
真の言葉に小鳥はポンと手を叩いた。
「そうだ!社長が呼んでるの!急いで社長室まで行って!」
思い出した途端に真をはやしたてる。
「え?!あ、うん。わかったよ!」
走っていこうとすると小鳥が再び声を掛けた。
「あ、汗はちゃんと拭いて行ってね!」
どういう意味なのか真には理解出来なかったが言われたとおり顔の汗を拭うと社長室の扉をノックする。
「失礼しま〜す。社長、呼びました?」
真が入ると社長とあと一人見たことの無い男性が椅子に腰掛けていた。
短髪を上げて黒い下縁の眼鏡の奥からは優しそうな笑みがこぼれていた。
「あ…」
不意に胸が高鳴るのを覚えた。
(なんだろ…この気持ち…緊張?、とは違うような…)
すっかり挨拶を忘れていた真に男性が近づいてくる。
「初めまして 菊地 真くん。今日から俺が君のプロデュースを担当させてもらうから、よろしくね」
真に向かって微笑むプロデューサーの顔を一瞬見つめると真はふと我に返った。
「プロデュース?え?!てことはボク、デビュー出来るんですか?」
デビューできる喜びが先程の感情を覆い被すと真は無邪気に喜んだ。
「やーりぃっ!これでボクもアイドルの一員かぁ!」
その姿を見ていたプロデューサーが声を掛ける。
「これから、頑張ってトップアイドル目指そうな!出来る限りの事はさせてもらうから」
そう言うとプロデューサーは右手を差し出した。
「あ、はい!よろしくお願いします!」
真も右手でプロデューサーの手を掴み握手する。
プロデューサーの手は真の手を優しく包み込んだ。
ボクとプロデューサーの初めての出会いは特に変わったことは無いけど何か運命的なものを感じた。
緊張と言うか嬉しすぎてあまり良く覚えてない…。
この後、みんなにもお祝いしてもらった。
特に雪歩なんて自分の事の様に喜んでらしくもなくはしゃいでいたのを覚えてる。
そんな雪歩を見て、やっとボクにもチャンスが巡ってきたんだと言うことを実感した。
デビューが決まったからには絶対、絶対1番になってやるんだ!
どんなに辛くても、どんなにしんどくても負けたり挫けたりしない!
そう言う訳だからこれからもよろしくお願いします!
ボクのプロデューサー