<とにかく叫んだ>

「誰かっ!たすけ―」
それ以上は続かなかった。

今度はお腹に硬く尖った物が埋まっている。

「ったく、油断もスキもねえな。黙ってろっつったろーに」
男はそう言いながら振り上げた足を下ろした。

再び咳き込む私の隣に座って男は嫌味な声を漏らした。

「一ノ瀬って奴の名前を呼んでも奴は来ないよ?一ノ瀬が俺らを寄越してるんだからさ」

うそ…

一ノ瀬くんが…そんなこと…

そんな…

それから私はもう一人の男に無理矢理立たされて倒れるのも許されないまま

何度も腹部を強打された。

もう何も吐くものは無い

胃液すら吐きつくした

胃液で喉が焼けて声を出すのもままならい

感覚が麻痺してきた頃、ようやく男の腕が離され私はそのまま膝から仰向けに崩れ落ちた。

「まぁ、これに懲りたら大人しくしてるんだな。それと解ってると思うけどこの事は人に…」

私を 見下ろしながら 男が何か を言 っている

「あぁ、言えなくしとけばいいのか。ククククッ」

もう 考 える 気 力もな い

ず るりと引 きず られ

服を破かれ 

貫かれる鈍い痛みと

身体を揺さぶる振動だけが 

記憶に残っている











チェシャ猫に会いたい…


「ちょっと遅くなったな…」

ガラガラと音を立てて玄関の戸を開く。

中は電気もつけないで真っ暗のままだ。

亜莉子の靴は玄関に脱いである。

「ただいま。亜莉子、いないのか?」

靴を脱ぎながら声を掛けても返事は無い。

「余所行きの靴で出かけたのかな?」

一歩足を踏み入れてふと違和感を感じた。

「あれ?チェシャ猫も来ないな…」

いつもなら誰が入ってきてもニーニー鳴いて頭を擦りつけて来るのに…。

居間の戸に手を掛けると中から亜莉子の声が聞こえてきた。

「ねぇ、チェシャ猫。白ウサギは何処にいったのかしら?」

「なんだ、亜莉子いるのか?」

「女王は元気にしてる?帽子屋とハリーは?」

「居るなら返事くらいしてくれよ、電気もつけずに」

手探りでスイッチを探してパチッとスイッチを入れる。

カンカンと電気の通る音がした。

その瞬間、信じられない光景が視界に飛び込んできた。

「あ、あ…亜莉…子」

もう服とは呼べない布を纏った亜莉子が半裸のまま膝に乗せた小さな毛玉に話しかけている。

その傍らには血の付いた包丁と猫の胴体が投げ捨てられていた。

「ねぇ、どうしてチェシャ猫だけなの?他のみんなはどこ?グリフォンは一緒じゃないの?」

「亜莉子…お前…」

「フフッ…でもいいの皆に会えなくても…」











「チェシャ猫はずっと一緒よね?」

ED1「空想の世界

 SS寄り あとがき